第96章 座り込んで値をつり上げる

灰原仁司はそれを聞くと、目の奥がすっと陰った。

杉浦杏奈は――あの1億のことを、きっと知っている。

今年の1億じゃない。彼女が子どもの頃から、杉浦家が毎年受け取ってきた1億。

灰原仁司は何度も人を動かして調べさせたが、結局、何ひとつ掴めなかった。疑念だけが重く沈んでいく。

問いただす間もなく、リビングの勝手口が押し開けられた。

杉浦正弘が入ってくる。背後には杉浦陽向。

正弘は着替えていた。先ほどの濃いグレーのスーツではなく、深い紺。髪も整え直し、顔には穏やかで余裕のある笑みが貼りついている。

彼は杉浦杏奈の前まで歩み寄り、気遣いに満ちた声で言った。

「杏奈。さっき一度戻って、...

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